サイコ・パス

 

ついにその日が来てしまった。

サイコ・パスとわたしが対面したのである。時刻は12時過ぎ。サイコ・パスは寝てるだろうと推測したのが間違いであった。

 

戦争は随分前から始まっていた。最初はなんともなかったのに、友達を家に呼んでおしゃべりしていた寒い冬の日、そいつは現れた。ギターを弾いたりして談笑していたら、いきなり壁ドンされたのである。まあ、ちょっとびっくりしたと思ってそのまま談笑を続けていた。友人の1人がタバコ吸って来ると言ってベランダに消えて部屋に帰ってくるなりそいつの話をし始めた。

「俺がベランダでタバコ吸ってたらいきなり隣の部屋の窓が開いて、俺びっくりしたからなんとも思ってないんだけどあ?って言っちゃったのね。そしたら『あ、じゃねーよ!うるせーよ!』って言われてバンって窓しめられた。」

なんだそれ。どんな隣人なんだよ。友達は黒髪ロングの女だった、と言っていてさらに気持ち悪くなった。お前は何様だ?

その日以降、そいつはわたしが楽しい気持ちの時に現れるようになった。

家で友達と遊んでいる時、家に彼氏といる時、壁ドンすることでわたしの生活を邪魔して来たのである。まあ、サイコ・パスだから仕方ないと思っていた。実際一年以上住んでいるがわたしは未だにサイコ・パスに出会ったことがなかったからである。しかし状況は一変した。昨日、お散歩から帰宅し部屋でとりあえずタバコでも吸って寝ようと思ってベランダでタバコを吸い始めた。そしたら隣の部屋の窓が開いた音がしたのである。これはもしや、、と思っていたらやつはベランダの仕切りから顔をのぞかせてこっちを見ながら『タバコくさいんだけど』と文句を言って来た。とりあえず「すいません…」と謝るわたし。謝ったあとも仕切りの内側からずっと『あー、タバコくっさ!!』と文句を言いながら窓をパシャりとしめて消えた。こいつはなんなんだろう、しかしサイコ・パスだから仕方ない。サイコ・パスにとってはわたしがあいつの生活を邪魔するやつなのかもしれないが、それはわたしにとっても同じである。わたしが楽しく過ごしている時をことごとくぶち壊してくるのがサイコ・パスだ。同じ値段の家賃を払っているといううえで、サイコ・パスとわたしの条件は一緒である。マンションの管理会社の人間にベランダでタバコを吸ってはいけません、部屋に友達を呼んで談笑してはいけません。と言われたことは一度もない。そうした点でいえば、わたしがサイコ・パスに一方的に文句を言われることはちゃんちゃらおかしいのである。嫌ならば引っ越しすればよい。禁煙で、壁が薄くないもっと条件がいいマンションなどいくらでもあるだろう。それなのになぜサイコ・パスはわたしの隣に住み続けるのだろうか。わたしはサイコ・パスの実態を調査するためにアマゾンの奥地へと向かった。続。